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避難上有効なバルコニーの構造

建築基準法施行令121条1項の規定により、2以上の直通階段が必要になるとき、避難器具を設置することで階段の1つを免除することができます。
避難器具を設置するスペースは、避難上有効なバルコニーと呼ばれますが、建築基準法では、避難上有効なバルコニーについて明文化はされていません。
そのため、避難上有効なバルコニーの構造(作り方)については、「建築物の防火避難規定の解説」を参考にします。

避難上有効なバルコニーの構造

  1. バルコニーの位置は、直通階段の位置とおおむね対称の位置とし、かつ、その階の各部分と容易に連絡すること。
  2. バルコニーは、その1以上の側面が道路等または幅員75cm以上の敷地内通路に面し、かつ、タラップその他の避難上有効な手段により道路等に安全に避難できる設備を有すること。
  3. バルコニーの面積は、2㎡以上避難する設備の部分を除く。)とし、奥行きの寸法は75cm以上とすること。
  4. バルコニー(共同住宅の住戸等に付属するものを除く。)の各部分から2m以内にある当該建築物の外壁は耐火構造(準耐火建築物にあっては準耐火構造)とし、その部分に開口部がある場合は、特定防火設備または両面20分の防火設備を設けること。
  5. 屋内からバルコニーに通ずる出入口の戸の幅は75cm以上高さは180cm以上及び下端の床面からの高さは15cm以下とすること。
  6. バルコニーは十分外気に開放されていること。
  7. バルコニーの床は耐火構造、準耐火構造その他これらと同等以上の耐火性能を有するものとし、かつ、構造耐力上安全なものとすること。

 

注意することが必要と感じるところ

避難上有効なバルコニーの構造について、最近特に注意をする必要があると感じているところがあります。

それは、上記した避難上有効なバルコニーの構造の「4」に関することです。

バルコニー(共同住宅の住戸等に付属するものを除く。)の各部分から2m以内にある当該建築物の外壁は耐火構造(準耐火建築物にあっては準耐火構造)とし、その部分に開口部がある場合は、特定防火設備または両面20分の防火設備を設けること。

ここに、「共同住宅の住戸等に付属するものを除く。」とあることに注意が必要です。

これは、「共同住宅のバルコニーにあっては避難上支障がないと考え、屋内部分との防火区画を緩和する。」というものです。

このことを知らず、普段共同住宅の設計を手掛けている人は、他の用途の建築物を設計するときに失敗します。

なぜ、最近特に注意をする必要があると感じているかというと、外観上共同住宅に似た宿泊施設(民泊)が増えてきているからです。

民泊として使用する建築物は、「宿泊施設」であり、「共同住宅」ではありません。

もし、このことを見落としていると確認申請で審査機関から指摘を受けます。
新築であれば対応することは簡単ですが、既存の共同住宅を用途変更し民泊を始めようと考えている場合は、普通サッシを防火設備に取り換える必要が出てくるため、見積りや工期に影響がでます。

具体的に、下図のような共同住宅を宿泊施設に用途変更しようとする場合について説明します。

共同住宅では、延焼ライン(延焼のおそれのある部分)にかかる「A」のサッシのみが防火設備となっていることが通常です。
しかし、宿泊施設では避難上有効なバルコニーに面する「B」のサッシも防火設備とする必要がでてきます。

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