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一敷地一建物の原則

一敷地一建物の原則

敷地とは、「一の建築物又は用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地」をいいます。
一の建築物がある土地を敷地という、つまり一つの敷地には一つの建築物しかない状態が基本的な考えです。
しかし、2以上の建築物が用途上相互に関係があり不可分の関係であるのであれば、一つの敷地に複数の建築物を建築することが可能です。
用途上不可分の関係とは、所有者、管理者が同一であればよいという話ではないので注意が必要です。

余っている土地に建物を建てたいという相談を受けることがありますが、建物の使用目的を聞いて敷地分割をすることが必要だとお話をすることがあります。それは、上記の一敷地一建物の原則があるからです。このことを知らない相談者が多いです。
敷地分割をする場合、分割した各々の敷地で接道がとれるか、既存の建物の容積率や採光は違法にならないか等を検討することが必要になります。

・一敷地一建物の例

・一敷地内に複数の建物がある例

ポイント

一つの敷地には一つの建築物しか建てられないのが原則。
ただし、建築物が用途上相互に関係があり不可分の関係であるのであれば、複数の建築物を建築することができる。

 

用途上不可分の関係とは

用途上不可分の関係とは、一般的に主要建築物とそれに付属する建築物からなる場合です。
例えば、住宅に車庫がある敷地を考えたとき、住宅は主要建築物であり、車庫は付属建築物です。住宅と車庫は機能上一体的な関係にあり、車庫は住宅にとって必要な機能の一部を構成していると判断できます。
用途上不可分の関係であれば、一敷地に複数の建築物を建築することが可能です。

 

用途上不可分の関係にある建築物の例

主要建築物 主要建築物に付属する建築物
住宅

車庫、物置、納屋、茶室、離れ

共同住宅 車庫、物置、自転車置場、電気室、プロパンガス庫、管理棟
旅館・ホテル 離れの客室、浴室棟、あずま屋、車庫
工場・作業所 事務室棟、倉庫、電気室、機械室、更衣室棟、食堂棟、浴室棟
学校 実習棟、図書館、体育館、給食室、倉庫
病院

診療棟、病棟、研究棟

 

住宅の離れ〈漫画「タッチ」を例に〉

住宅の離れの用途上不可分の関係として扱える場合と扱えない場合を説明します。
漫画の「タッチ」で上杉家と浅倉家は庭に子どもたちの部屋を作っていました。この部屋は子どもたちが勉強をするためだけの部屋であるので、主要建築物に付属する用途上不可分の建築物として扱うことができます。
では、もしこの勉強部屋にキッチン、お風呂、トイレ等の設備が備わっていたらどうでしょうか。
その場合、住宅(主要建築物)に戻らずとも勉強部屋の離れだけで生活ができるようになってしまいます。各々の建築物で生活をするための機能が完結し、住宅と離れの主従関係がなくなってしまいます。このような設備を備えた勉強部屋(付属建築物)は、住宅(主要建築物)と用途上不可分と関係として扱えないため、住宅と同一の敷地に建築することはできません。

ちなみに、喫茶店の南風は浅倉家のお父さんがマスターのお店なので、南風と浅倉家の住宅は所有者が同じであることが考えられますが、店舗と住宅は用途、機能上切り離すことができ、不可分の関係とは認められないため当然に別敷地に建てなければなりません。


※勉強部屋が浅倉家の離れとして建築されていることを想定して境界線を引いています。他にも上杉家の離れであるパターン、南風(店舗)と同一敷地であればスタッフ休憩室として申請されているパターン、勉強部屋のある敷地が接道を確保できていれば一敷地一建物のパターンで建てられていることも考えられます。

ポイント

建築物間に主従関係がなく、用途、機能上、敷地を分けられると判断できる場合、同一の敷地には建てられない。

 

一団の土地とは

敷地とは、「一の建築物又は用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地」でしたが、一団の土地については建築基準法で定義されていません。一般的には、道路や水路などで分断されておらず、一体的に利用可能な連続した土地と考えられています。

一団の土地とみなされない例


 

水路で分断された土地が一団の土地とみなされる例


 

水路で分断された土地でも、橋や暗渠により一体の土地として利用できる状態であれば一団の土地とみなされることがあります。敷地を行き来できるようにするために水路に設ける構造物については、所轄行政庁に占用許可申請を行い、継続的に使用できるようにすることが必要です。

 

 

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