先日、私の好きなYoutuberきまぐれクックさんが、「新築で撮影スタジオを作ったけど話す声が反響してしまい困っている」という内容の動画をあげられていました。
動画内では声の聞きづらさの原因を反響と説明されていましたが、正しくは残響といいます。
ちなみに、私はこの方の動画を見て魚をさばくことに興味を持ち、自分で魚をさばく楽しさを知りました。
残響と反響の違い
反響は、直接音と反射音を区別して聞くことができる音を指します。 山でヤッホーと言うとヤッホーという声がそのまま返ってきて聞き取ることができます。これが反響です。
残響は、直接音と反射音を区別して聞くことができない音です。お風呂に入りながら歌を歌うと声がよく響き、余韻が残ることで気持ちよく歌うことができます。これが残響です。
残響時間
音源が停止した後も周りの壁や天井などで反復反射をする音により残響が生じます。
そして、残響の生じている時間の長さによって心地よい空間であったり、不快な空間となったりします。
その空間の使用目的によって異なりますが、良好な音響環境を作るためには一定以上の明瞭度が必要です。
明瞭度とは、音(話し声)の聞き取りやすさです。明瞭度に大きな影響を与える要素には、音圧レベル、騒音レベル、反響等がありますが、残響時間もその一つです。
残響時間とは、室内に一定の強さの音を出し定常状態に達してから音源を止め、室内の平均音響エネルギー密度が100万分の1に減衰するまで、すなわち音の強さのレベルが60dB低下するのに要する時間のことです。
一般的に、残響時間が短いほど明瞭度は高くなります。
そのため、スタジオのような会話や言葉の聞き取りの明瞭さを必要とする部屋では残響時間を短くします。
逆に、コンサートホールのように音楽が響くことを必要とする部屋では残響時間を長くします。残響時間が短いと余韻がなくなり、音楽の音の豊かさが失われてしまうためです。
残響時間の計算式
残響時間の代表的な計算式に、セイビン(Sabine)の残響式があります。
$$T=0.161\frac{V}{A}=0.161\frac{V}{\bar{a}S}$$
\(V\):室容積
\(A\):室内の総吸音力
\(\bar{a}\):室内の平均吸音率
\(S\):室内の総表面積
このセイビンの残響式から次のようなことが分かります。
ポイント
- 部屋の容積(V)が大きくなれば、残響時間(T)は長くなる。
- 室内の総吸音力(A)が大きくなれば、残響時間(T)は短くなる。
- 残響時間(T)を一定に保ちたい場合、容積(V)が大きくなれば吸音力(A)も大きくしなければならない。
- 音の大小は残響時間(T)に影響しない。
天井の高い部屋や体育館などで声が響くので、容積(V)が大きくなれば残響時間(T)が長くなるというのは想像しやすいと思います。しかし、音源の大小が残響時間に影響しないというのは意外ではないでしょうか。
まとめ
同じ容積の部屋なら室内の仕上げの吸音力を大きくするほど残響時間は短くなり、明瞭度は高くなります。
部屋の利用目的と広さが決まったら、建築材料の吸音率を考慮しながら仕上げ材の選定を行うということが良好な音響環境作りに必要です。
冒頭で撮影スタジオという特殊なケースを例に出しましたが、私は今までに事務所の会議室や保育所などの残響問題の相談を受けたことがあります。このようなトラブルは特殊な用途の施設に限ったことではなく身近にあります。
見た目のデザインのことしか考えていない建物づくりをしてしまうと、音響環境の悪い空間となってしまうことがあるので注意しましょう。